バイオミメティクスーシロアリから学ぶことー

「バイオミメティクス」という言葉をご存知ですか?

 

バイオミミクリーとも言い、生物やその生活のプロセスのもつ優れた機能や形状を模倣し、工学・医療分野に応用することを指します。

 

生物の構造と生活プロセスは、自然と調和しながら進化・最適化をしてきたものなので、私たち人間にとっての良いお手本となります。

 

そういった視点で見ると、シロアリの暮らしもお手本です。

シロアリと言っても、日本で住宅に被害を及ぼす あのシロアリではありません。

 

熱帯地方において、その役割の多さから「エコシステムエンジニア」とまで呼ばれるシロアリの事です。

 

今回は「エコシステムエンジニア」という意味でのご紹介ではありませんが・・・

 

熱帯に住むシロアリの巣は、日中は50℃にもなる強い日差しを受け、夜間は外気温が0℃まで下がるという過酷な環境にあります。

しかしシロアリは巣の内部でキノコを栽培するため、蟻塚の中の温度を一定に保つ必要があります。

 

 

また、蟻塚の中では、シロアリによる食事や、共生している菌によるセルロースの分解が進んでいるため、発生する二酸化炭素や水素などの気体を循環させるための換気機能も必要です。

 

では、どのようにして温度を一定に保ったり、換気を行ったりしているのでしょう?

 

日中外気に接する部分で暖められた空気と蟻塚の奥深くの空気には温度差があるため、蟻塚内全体の空気循環が始まります。

そして夜になると蟻塚の奥の空気の方が表面に近い場所よりも温かい為、日中とは真逆の空気循環が始まります。

 

この空気循環に伴って、蟻塚に無数に空いた小さな穴(トンネル)から二酸化炭素などの蟻塚内で発生した物質も排出されていきます。

 

 

細長い無数のトンネルが縦横に張り巡らされた巣の構造自体が、自然換気をうまく行うようにできているおかげです。

 

さらに驚くことには、シロアリは、風の吹き方などの環境の変化に応じて、絶えず塚を修復し、通気口を塞いだり、開いたりすることで空気の流れをコントロールしたりもするそうです。

 

まるで肺で行われる呼吸循環のようなサイクルを巣で実現しています。

 

そして、この仕組みを建物に取り入れているのが、ジンバブエに1996年に建築家ミック・ピアースによって建設されたイーストゲートセンターです。

 

 

 

このビルでは日中には建物の壁で太陽からの熱を吸収し、夜間にファンを利用してその空気を内部へ送り込むという空調を行っています。

これにより、冷却装置のコストは従来の10%で済み、エネルギー消費自体も同市の同規模施設とくらべて35%も削減されているということです。

 

また、ドバイにも、シロアリの蟻塚を参考にしたオフィスビル(O-14 ドバイ・タワー)が建っています。

 

 

このビルは、外観に大小数々の穴を持っており、表層の「シェル」と呼ばれる部分と、メインの部分には1メートル程度の隙間があります。

これがいわゆる「煙突効果」を作り出しています。

そのため、空気の循環が効率的になり、温度調節のコストが低下する、という仕組みです。

 

素晴らしいですね。👍

 

しかし、スコット・ターナーという生物学者が、1995年から97年にかけて行った調査を根拠に、シロアリの塚の内部構造は、温度調節のためのものではない、と主張しました。

蟻塚はシロアリの群と塚が一体となって「生きている」のだと。

それゆえ、巣が「完成」することはなく、風の強さや方向、土の温度や固さなどを感知し、それに適応するように構造を変化させているのだということです。

 

難しくなってきましたね💦

 

そこに住んで生活しながら、環境の変化に応じて構造を変化させる建物を作ることは、私たち人間には今のところできません。

 

ですが、近年、建物内部でAIやIoTを使って温度環境や換気を自動調節するような仕組みは生まれています。

 

今後、さらにこうした生物の研究が進み、より快適でエコな住環境が実現する日もそう遠くないのではないでしょうか。

 

R.