住宅まめ知識 -床(床の間)-

最近では家に和室があっても、わざわざ床の間(正確には床)を設ける方は少なくなって来ています。

 

床(とこ)とは、座る場所や寝る場所のことを指し、床の間の起源については諸説あります。

 

まず1つ目の説は、室町時代から江戸時代初期に書院造りから生まれ、殿様など身分の高い人が座る場所を一段高いところにしていたのが始まりと言われています。

 

そうやって、江戸時代には権威の演出であったものが、しだいに庶民の家にも広まり、時代とともに掛け軸や生け花を飾るなどしてお客様をもてなす部屋という形に変化して行きました。

(日本式応接間といった感じでしょうか)

 

 

 

2つ目の説は室町時代、僧侶が仏画を掛けた壁の前に三具足とも言われる花瓶、香炉、燭台を飾ったことから始まったと言われています。

この三つを置いた台を「床(とこ)」と呼んだことから貴族や一部の武士の間に広がり、「床の間」の原型が生まれたという説です。

 

それが、安土桃山時代になると茶の湯が文化として広く浸透し、数寄屋造りの茶室が流行するとともに、床の間に貴重な掛け軸や茶道具を飾って客人をもてなす事が風流とされて行きました。

 

いずれにしても床の間には客人をもてなす部屋という意味があるので、床に一番近い場所が上座となります。

 

このように、歴史ある床の間ですが、時代とともに住居や生活スタイルが変化していくにつれ、新しい様式も誕生してきました。

 

スキップフロアの床の間

 

リビングの畳コーナーにある床の間

 

少し前までは、婚約の時、結納品を受け取ったり、その後飾ったりするというような場としても利用されていました。

 

今ではほとんどの場合ホテルや料亭などで行われますよね。

中にはお茶室として使用される方もいらっしゃいます。

 

掛け軸や、生け花、書や絵画などを飾られる方がほとんどですが、そういった趣味のない方には無駄なスペースかも知れません。

 

 

 

 

また、とこさし(漢字では床差し、床刺し、床挿しとも書きます)という言葉をご存知でしょうか?

 

天井を支える部材『竿縁』や畳が床の間に刺さる(直角になる)ことを床さしといい、昔から『不吉』とされて施工を避けてきました。

刺されることを連想すると嫌われ、武士から生まれたいわれだとされています。

 

 

 

床(床の間)は必ず必要なものではありません。

暮らし方にあった考え方で良いのだと思います。

 

R.