つれづれなるままに・・・

私は古典文学の随筆を読むのが好きです。

昔の人々の暮らしぶりや考え方など、今とは全く違っていたり、読んでいて「そうそう」と思わず相槌を打ちそうになるほど今と同じであったり・・・

 

 

徒然草は1330年ごろに吉田兼好によって記された随筆です。

 

 

この中に、住まいについて書かれた段があります。

その部分についてご紹介します。

 

 

徒然草 -第55段―

 

家の作りやうは、夏をむねとすべし。

冬はいかなる所にも住まる。

暑き比(ころ)わろき住居(すまい)は、堪へがたき事なり。

深き水は涼しげなし。浅くて流れたる、遥かにすずし。

こまかなる物を見るに、遣戸は蔀(しとみ)の間よりも明し。

天井の高きは、冬寒く、灯暗し。

造作(ぞうさく)は、用なき所をつくりたる、見るも面白く、万(よろづ)の用にも立ちてよしとぞ、人の定めあひ侍りし。

 

(現代語訳)

家の作りようは、夏を中心にしたほうがよい。

冬はどんな所にも住める。

暑い頃、悪い住まいは、堪えがたい事だ。

深い水は涼しい風情が無い。浅く流れるのが、ずっと涼しげだ。

遣戸(引き戸)のある部屋は蔀(格子付きの上げ戸)のある部屋よりも明るい。

天井の高いのは、冬寒く、灯が暗い。

家の作りは、用の無い所を作りこんでいるのが、見るにも面白く、万事、用にかなってよいと、人の評定しあったことだ。

 

蔀戸

 

 

当時の人々はことさら日本の暑い夏が耐え難いと思っていたようですね。

近年の地球温暖化による高い気温に比べればましだったような気もしますが、当然今のような冷房設備もなかったですからね。

でも、近年ではどちらかといえば寒い冬に断熱性の高い家という方が望まれているような気がします。

おまけに、どんなところにも住める・・・なんて絶対無理でしょ💦

 

鎌倉時代の住居

 

また、当時とは電力事情も違っているので天井が高くても、たとえ吹き抜けがあったとしても寒かったり暗かったりするというようなことはありません。

逆に吹き抜けを設けることで家の中に風の流れを作り、夏を快適に過ごすことも可能です。

 

 

さらに、明らかな目的を持たない部分を作ることが面白いと書かれていますが、これってデザインの事なのでしょうか。

それとも空間の事なのでしょうか。

パルステージでも、こういった空間づくりを大切にしています。

 

いずれにしても、690年も前の日本とは気候も文化も変わってきています。

それでも中には通じる部分もあるのですね。

 

R.